IP WEB −IP航海日誌−アーカイブ IP WEB Advertise Project Report Seminar Service About us
HomeIPBio/MedicalEcologyTechnologyITMarket

「SNPs = single nucleotide polymorphisms 1塩基多型」
2001.9.25 - written by ipweb analyst -


SNPsとは

SNPsとは、簡潔に表現するとゲノムDNA配列の1塩基違いのことを指す。特定の集団において1%以上の頻度で出現しその変異が何世代にもわたり集団内に伝播したものである。約31億個の塩基対を有するヒトゲノム上にはおよそ300塩基対ごとに1SNPが存在するといわれている。たった1塩基の違いが、何故重要なのか。それは遺伝マーカーとしての存在だけでなく、その位置によってはアミノ酸配列に変異をもたらす場合や、遺伝子発現に影響する可能性もあるからである。現在、このSNPsを発見するプロジェクトと、解析するプロジェクトが国内外の研究施設で進んでいる。国内では日本人のSNPsを同定する国家プロジェクトが走っており、痴呆、癌、代謝性疾患、循環器疾患、アレルギー疾患の5大疾患について解析が進められている。

SNPs解析が目指すところ

SNPsを解析するためには、まずSNPsを発見しなくてはならない。そのためには、ゲノムをひたすらシークエンスし、1塩基の違いを同定するのである。ゲノム上の全SNPsを同定する作業は気の遠くなるような大事業であるが、その後に待ち受ける解析もさらにやっかいなものである。特定の集団のデータ(疾患の有無や薬剤の有効性等)と同定されたSNPsを比較し、その関連性を明らかにしていくのである。一連の作業のためには、シークエンスからタイピングまでの自動高速化が要求されるであろうし、個々のSNPsについてのデータ(位置、機能)の蓄積も必要である。しかし、これら膨大な労力の先にあると期待されるのは、新薬開発、遺伝子治療、オーダーメード医療、疾患予防などこれからの医学にとって応用性の高い成果なのである。

SNPs解析で将来の医療はこうなる

SNPsの解析結果によって、我々はどのような恩恵をうけることになるだろうか。一言でいえば「オーダーメード医療」である。個人の遺伝子情報を解析し、その個人に合った最適な治療を受けられるようになるかもしれないということである。それは遺伝子治療に限った話ではない。例えば薬について考えた時、遺伝子配列が一ケ所違うだけで同じ薬が薬として働くこともあれば、症状を悪化させる方向に働くこともある。人によっては薬の効果よりも副作用の方が前面に出てくる場合もある。現在は大多数の人に効果のある薬が処方されているので、たまたま薬が効かない人がいても仕方がないのである。ところが、「オーダーメード」で処方されれば、有効性を事前に知ることができるし副作用の心配もなくなるだろう。さらに個人の遺伝子情報から、その人の現在の疾患情報だけでなく、将来罹る可能性の高い疾患も予測できるようになるかもしれない。そうなれば、生活習慣病などは予防策を立てやすい。発見まで比較的時間のかかる癌なども早期発見が可能となり治療効果が向上するであろう。遺伝子治療の技術が進めば、幼少期に癌や痴呆の原因遺伝子の治療を行うことができるようになることも期待される。遺伝子情報が戸籍のようになり、個人を証明する時も医療を受ける時も、提示するのは遺伝子配列という時代がくるかもしれない。

SNPs場外乱闘・・特許との戦い


ヒトゲノム計画が進行している時から、遺伝子情報が特許になり得るかということが問われてきた。遺伝子解読をめぐる特許については日米欧の特許庁が、病気の診断や新薬の開発につながるなど遺伝子の機能が確認されることを条件とすることで合意していた。しかし、機能が分かった場合、断片でも特許を認めるかどうかなど細かい判断基準は各国にゆだねられていた。遺伝子断片の配列が、研究等のツールとして有用な場合はどうであろうか?SNPsを考えた場合、1塩基の違いが疾患を診断する場合に有効であれば診断キットの一部として扱うことができる。必ずしもタンパク質をコードする全配列でなくても、モチーフを検索したり未知の遺伝子産物の機能を予測するような時に使う場合もある。遺伝子特許の審査指針を検討していた米特許商標局は、遺伝子断片でも、その有用性を示せば特許として認める新指を発表した。遺伝子特許を広範囲に認める内容で、遺伝子特許が米国を中心とした企業に独占される恐れがある。日本でも有用性が開示されたDNA断片は他に拒絶理由が存在しない限り特許可能な発明であるとする指針が出された。しかしながら、この「有用性」についての各国の基準があいまいで、なかなか足並みがそろわないのである。機能が不明であるような配列の特許を認めてしまえばこの分野は特許が氾濫してしまうことになり、科学者を利益至上主義に走らせることにならないかという声もある。この問題は突き詰めると、また最初の疑問に戻ってしまう。遺伝子配列は特許になるのか?そもそも、特許は「発明」に与えられるもので「発見」とは無縁のものなのではないか?これについての議論は別の機会に譲ることにするが、ゲノム解析の結果をより広く応用するためにはSNPs解析の総合的なシステムを早急に完全な形で立ち上げなければならない。出遅れは許されないのである。

今後の展望

SNPs解析は、国のプロジェクトと共に民間の研究施設でも精力的に進められている。技術的なところが発展途上である点にもよるが、解析効率が研究室(研究所)規模に比例しているように思われる。これではアメリカなどと力比べをしても勝ち目がない。倫理的な面も含めた法的整備はもちろん、国内での技術協力が必須である。ゲノムビジネスは多様な産業を発展させる可能性を秘めているが、将来我々が受けるであろう恩恵がより安価であるために、柔軟な組織作りが求められる。



| 戻る |

Copyright© 2000-2004 Intellectual Asset Management Ltd. All rights reserved.