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「バイオ特許を巡る争い」
− 人間の遺伝子情報は世界の共有財産か、ベンチャー企業にとっての金の卵か? −

2001.4.23 - written by Tomohito Ihara -


バイオ特許については、「ビジネスモデル特許戦略」の中のコラムでも紹介しましたが、ビジネスモデル特許と並んで、このところ話題を集めている知的財産権関係のトピックの一つです。その背景としては、バイオテクノロジーの進展により、それらを活用したビジネスが現実化しはじめたこと、ヒトゲノムといわれる人間の遺伝情報についての解読作業が急速に進展したこと、その解読作業を巡って、民間企業と政府側が激しく争っていることなどがあるものと考えられます。特に、民間企業側の代表ともいえる米国のセレラ・ゲノミクス社は、数多くの自動解読装置とスーパーコンピュータを使って、これまで、2005年までかかると言われていたヒトゲノムの解読を完了したと主張しています。これに対し、官側は、日米欧の国際共同プロジェクトチームは、1990年に解読作業を開始していたが、なかなか進展していなかったようであり、現在、、猛烈な追い上げをしている模様です。

この遺伝情報と特許は、一体どのような関係なのでしょうか。

遺伝情報は、様々な機能を表した情報の固まりであり、無体財産であることは誰も否定しないでしょう。また、その情報は、医療、薬品、食品その他非常に幅広い産業に関係があり、一部ではITと並んで、産業構造そのものを変革することにつながるとも言われているほどですから、ビジネスの対象として、多大な価値を持っていることも確かでしょう。だからこそ、セレラ・ゲノミクス社は、そのビジネスの金の卵である遺伝情報を特許で抑えようとしたのです。

遺伝情報については、1998年11月に、米国特許庁が、インサイト・ファーマスティカルズ社の「EST」という遺伝子の断片について特許を認めたことから、広く特許を認められるという認識が一旦広がりました。しかしながら、日欧がこれに対し懸念を表明し、1999年5月に、日米欧特許庁は、バイオ特許について、統一的な基準を示し、「機能があいまいな遺伝子特許は成立しない」ということを明らかにしたのです。

そして、さらに、2000年3月下旬には、クリントン米大統領とブレア英首相が、「遺伝子は人類の共通の財産」として、セレラ・ゲノミクス社に対して、全面的な公開を促す共同声明を発表しました。

しかし、遺伝情報に対する知的財産権による保護を弱くすることは、一歩間違えれば、米国がリードしているバイオビジネスの分野のadvantageを失わせることになりかねないことから、米国政府の立場は、微妙といえるでしょう。実際に、米国では、セレラ・ゲノミクス社以外でも、インサイト社、HGSI社、アサシス社などが遺伝情報に関係のある特許を数多く申請をしており、そのうち一部は既に特許を取得したとしている状況を考えれば、あまり強くバイオに関係する特許の範囲を制限することには反対もあるでしょう。

3極特許庁の整理によって、特許取得に当たっては、機能が必要とされましたが、一部では、そもそも「機能」といった時に、どの程度のものが求められるのかが曖昧であるとの指摘も見られます。

さらに、3極特許庁の整理によっても、機能を明確にすれば特許となるわけです。日米欧政府が中心となって行っている国際プロジェクトが、いち早く全てを解析し、機能も明らかにした上で、世界の共通財産として無料で公開することができず、一民間企業が特許を取得した場合には、その遺伝情報を機能ごと独占してしまう懸念は残っているのです。他方、予め、かかる権利の付与を否定すれば、民間企業にとっての研究開発のインセンティブは著しく低下することは否定できないでしょう。セレラ・ゲノミクス社にしても、膨大な解析装置やスパコンを投入し、研究開発をしているのは、遺伝情報がビジネスの金の卵だと信じているからであり、決してボランティア活動ではないでしょう。

このように、バイト特許を巡る状況も、不透明な部分があり、引き続き世界中で、議論が続いていくものと思われますが、通常の特許とは異なる形での権利の付与などの工夫が必要となってくるかもしれません。



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