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炭疽菌レポート  2001.10.22 - written by ipweb analyst -


アメリカで起こってしまった生物テロ。多くの人は「炭疽菌?」と疑問に思っているところだろう。しかしながら、対岸の火事ではすまないのは狂牛病と同じである。大切なことは、正しい知識を持ち、正しく備え、不要なパニックに陥らないようにすることである。

炭疽菌とは  
炭疽菌 (Bacillus anthracis) はグラム陽性桿菌である。血液培地で発育し運動性はない。3種類のトキシンを出し、時にヒトを死に至らしめる。炭疽菌は元々草食動物の感染症であるが、稀に羊などの毛を扱う人が感染していた。菌の培養が容易で、芽胞が消毒剤等に比較的強い特徴がある。感染部位によって、肺炭疽、皮膚炭疽、腸炭疽に分類される。

臨床症状
1) 肺炭疽  
芽胞を吸引することで感染する。空気感染する芽胞が大きい場合は肺胞までたどり着かず、絨毛運動等で排除され肺疾患を起こさない。芽胞の粒子が細かくなると、肺胞に付着しリンパ節へ運ばれる。そこで、リンパ節の壊死、出血性縦隔炎などを起こす。その後血液中に取り込まれた場合は敗血症や髄膜炎などを併発する場合もある。初期症状はインフルエンザの様な発熱と筋肉痛であるため、診断が付きにくいが病気の進行が早いことと、致死率が高いため早期の治療が必要である。インフルエンザの症状から数日内に呼吸困難や低酸素血症がみられる場合は要注意である。

2) 皮膚炭疽    
皮膚に付着した芽胞が、傷などから侵入して起こる。最初の症状としては痛みがなく、丘疹ではじまりその後水疱になる。2日程で潰瘍が形成される。

3) 腸炭疽    
感染した肉を接種することで起こる。激しい腹痛が特徴で、出血性腹水が特徴。

治療法  
感染してしまった場合は、早期に対応することが重要で抗生物質による治療が効果的である。ペニシリンG、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アモキシシリン等が有効であるが、耐性菌の蔓延のことから不必要な段階の予防的投与は控えた方が良い。また、10月に日本医師会が発表した内容によると、日本では保健適用外の場合があるとのこと。

生物兵器について  
大量殺人を可能にする手段として(微)生物を用いることを指す。生物兵器の特徴は、なんといっても安価である点にある。歴史的に振り返ると多くの国が戦時下において生物兵器研究を行ったが、実際に用いたことが報告されている国は唯一日本である。第二次大戦中にペスト菌を使用したといわれている。その後1972年、140ヶ国以上が生物兵器による脅威なくすことに合意している。国連では、これに合意せず生物兵器を開発保有している国としてイラクをあげている。

生物兵器に用いられる微生物  
生物兵器に用いられるためには死亡率が高い、感染性が高い、菌の保有と培養が簡単等の条件が考えられる。使用される可能性が高い病原体・毒素として厚生労働省が10月に発表したものは、炭疽菌、天然痘ウイルス、ペスト菌、ボツリヌス菌毒素である。

生物兵器の脅威  
生物兵器の脅威については、他の一般的な兵器と比較するとわかりやすい。まずは先ほどの通り安価であることから、核兵器等を開発できない国や組織でも保有が可能であることである。非常に大雑把に見積もっても0.1%以下の費用である。それから持ち運びが簡単である。アメリカの例では封書で送られてきたが、核爆弾ではこうはいかない。一番の脅威は効果が及ぶ範囲が、当事者でも想像できないほど広いことであろう。1万人いる場所にミサイル攻撃すれば、被害は最大1万人である。しかし生物兵器は感染者が新たな生物兵器となる。潜伏期間があることがさらに事態を悪化させるもので、その間感染は恐ろしい勢いで広がる可能性がある。あなたはビルに飛行機が激突する映像を見たらテロと思うだろうが、家族が発熱で倒れたらテロだと思うだろうか。また、敵を精神的なパニックに陥らせる目的では最強である。見えないし、気付かないのだから毒ガス以上である。

生物学を専攻する多くの研究者が危惧する事柄は、使用されている菌株が天然のものかどうかである。遺伝子組み替えが容易な昨今では、さらにパワーアップした菌を作る事は誰でも考えられる。人類を脅かす生物兵器への対策を、全世界が本気で取り組む時がきた。核兵器同様、まずは作らないことが一番なのだが。

最後に  
今回の特集は生物兵器と炭疽菌であるが、日本人はこの手のものには学習能力がない。アメリカの中枢を破壊したテロを目の当たりにして、サリン事件を思い出した人は多いであろう。日本の中心霞ヶ関近辺で起こった歴史上最初の毒ガステロである。ところがこの後日本がやってきたことは何であろう。毎日地下鉄を使っている人なら気付くだろうが、不審物注意の張り紙とゴミ箱撤去のみである。危機管理の甘さは薬害エイズや狂牛病で思い知ったはずである。責任者の保身に走らない対応が求められている。



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