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知的財産サロン 知 的 財 産 サ ロ ン:『フジサンケイ ビジネスアイ』オピニオン面「知的財産サロン」毎週金曜日掲載

2004/3/26紙面掲載
あなたもなれる? 発明長者[4] インセンティブに何を求めるか
対価の算出の仕組みを理解しよう
無視できない雇用環境の変化
「知財ビジネス&ビジネスシステム」中岡浩

■お金と地位、どちらを選ぶか■
職務発明を成したご褒美を企業からもらえるならば、お金と安定した地位、あなたならどちらを選ぶだろうか。迷わずお金といえるだろうか。
実は世の中、発明に対する対価を金銭で得ようという研究者ばかりではない。むしろ日本では、企業業績が上がることによって、ある程度の昇進をすることを望む研究者の方が、いまだに多いのである。
一時的に莫大な報償金額を手にすることはできなくとも、企業においてより安定した地位が得られる上に、昇進すれば社内の給与規定に準じた昇給もあるからだ。また個人的にやりたい研究をする機会や資金を与えてもらったり、設備や部下を充実してもらったりと、研究活動における実質的な環境面の整備、向上がインセンティブとなるという研究者も少なくはない。
このような意識傾向は、終身雇用制度が守られて来た時代に形成されてきた。研究者にすれば、職場をともにする他の研究者や職員との摩擦は生みたくないという心理作用が常に強く働くために、報償にことさらこだわって、職場の和を乱すべきではないと考えられてきたのである。
企業にとっても、安定した雇用環境さえ保証しておけば、報償などで巨額な請求をされるリスクもほとんどなかった。このため発明のインセンティブにどう対応するかについては、人事的な処遇での対応を全面に出し、対して報奨での対応を控えめに設定してきた。

■変わる研究者の意識■

日本人の意識の根底にある「お上意識」や謙譲の美徳といったものも、日本人のインセンティブに対する意識に影響を与えていると思われる。研究者は自らの能力や業績をことさらプレゼンスすることを回避する傾向があり、また企業の側も研究者を主従に似た感覚でとらえようとしたり研究者の高潔な人格を評価する傾向にあったりしたのではないだろうか。いずれにせよ、研究業績以外の要因が大きく影響してきたのである。
しかしながら近年、リストラや若年層の転職志向によって人材の流動化が活発化し、終身雇用制度が揺らぎ始め、従業員の能力や業績を重視する傾向が強まってきた。結果、企業内の人事制度も変化を始め、新しい人材の評価体系とそれに見合う処遇が必要になった。
年功序列の廃止、専門職制度、プロジェクトや職務の社内募集制度などの設置などである。従業者の側も企業に対して己の能力を積極的に示していかなくては、求める職務や待遇は得られなくなりつつある。年功序列による待ちの時代から、従業員個々が専門能力によって競争する時代に移りつつある。研究者は、専門的能力を問われる従業者の典型である。すなわち、研究者こそ自身の意識を変えていかないと競争に生き残れない時代に入りつつあるのである。
かように雇用の形態は変わりつつあり、もはや無視できない。研究者といえども金銭的な評価を要求することがふさわしい時代になってきたと考えられる。では研究者は自身の発明に対する対価について、これからはどう考えていけばよいのであろうか。

■算定はおおざっぱにしかできないもの■

従来のようにあまり自らの主張をしない方が得策であった時代とは違い、今後は自分がどのようなインセンティブを望むのかを明確にする必要が出てくる。だからといって、主観に傾き過ぎると企業との調整がつかない。おのずと客観的な根拠が必要になる。
インセンティブを考える上での基本は、正面から一度、発明の対価を考えることにある。誤解のないように言えば、発明の対価に相当する金銭を請求しなくてはいけない、ということではなく、発明の対価がどれほどなのかを理解することによって、初めてインセンティブの客観的な妥当性がつかめるということである。
発明者のインセンティブを考える上で特許法三五条が明文化しているのは人事規定ではなく、発明者が発明の対価の支払いを受ける権利規定である。特許法三五条でいう対価とは、報奨や賞与など金銭のことだ。つまり、報奨とは発明に対する研究者の権利として法の定めによって守られた、最も基本となるべきインセンティブなのである。
これまで日本的な企業風土の中では、否定的にとらえられてきた金銭請求が、実はずっと前から法律に堂々と明記されていたのである。
では一体、発明の対価を計算するには、どうすればよいのだろうか。基本的な考え方だけは理解しておきたい。
まず発明の対価の算定に当っては、おおざっぱにしかできないものなのだ、という解釈をしておくことである。話題になった日亜化学工業の青色発光ダイオード(LED)訴訟でも、大手監査法人など専門家によって試算された青色LED特許の財産価値は、二五〇〇億円以上ものくいちがいが生じた。専門家でも精緻に算定することは非常に難しく、解は決してひとつにはならないということである。
 次に研究者が受ける特許のインセンティブは、特許の持つ財産的価値を企業と発明者が、それぞれの貢献度合いによって分け合うということで決まることを理解しておこう。例えば一千万円の経済価値を持つ特許があり、研究者と企業の貢献度合いが三対七ならば、研究者の得られる対価は三百万円である。

■特許の財産的価値は売上が基本■

貢献度合いとは、研究者ならば、その発明を完成させるために自分の着想がどれくらいの貢献をしたか、企業ならばどれくらいの研究設備を提供し研究をサポートしたかということになる。しかし、着想と設備は比較のしようがなく、おおざっぱに割り切るしかない。これもまたあいまいな考え方である。
次に特許の財産的価値の算定である。通常、特許の財産的価値は、当該特許を利用できる期間中に、当該特許を使った商品を販売して得られるであろう売上と当該特許を他社等に移転したり利用させたりして得られる売上の総和となる。
ここで注意すべきは、商品の売上においては、当該特許の貢献度合いにおいて計算する必要があるということだ。当該特許が加えられていない場合と加えられた場合の売上の違いを明確にしなくてはいけないのである。

(ミニ用語解説)

◇インセンティブ◇Incentive
 一般には行動の動機づけのこと。企業が社員に対して通常の給与や賞与以外に、業績貢献度に応じて付与する報酬・褒賞。例えば売上目標に達した場合、与えるものは営業インセンティブという。近年ではインセンティブの形態も様々でストックオプションによって自社株を与える方法が活発になりつつある。研究者の場合、特許の報奨金のほか、地位、研究費などもインセンティブの対象になる。日本においてはインセンティブのあり方が明確ではないケースが見られるが、米国の場合は研究者が入社する際に企業との間でインセンティブについて明確な契約がかわされる。


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